DOGS AND DNA




キャラクターズ

犬は、人類最古の愛玩動物として、人に最も身近で愛されるべき友人です。写真、映画やアニメ、各種グッズのキャラクターとして最も多用されるのではないでしょうか。

売れない作曲家ロジャー・ラドクリフの飼い犬のダルメシアン、ポンゴが、パディータと散歩中に、クルエラ・デ・ビルの手下に誘拐された子犬を救出するというのは、ウォルト・ディズニーの『101 Dalmatians』です。
4年後、仮出獄するクルエラが心理操作で愛犬家になる、という話は、続編の『102 Dalmatians』ですね。

『Lady and the Tramp(わんわん物語)』は犬同士の愛情物語ですが、同じウォルト・ディズニー映画の『Oliver & Company(「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」)』は、子猫オリバーのとその仲間ドジャーらによる身代金目当で誘拐されてしまったオリバーの飼い主ジェニーの救出劇ですね。

トリックスター

一方、犬は、人間生活にとても密接であるがゆえに単に愛されるだけでなく、愛憎の的にもなり、人知が関与する「事件」との係わりも深いものがあります。
「推理もの」などのシナリオでは、トリックスター的アイテムとして有効に作用します。

魔犬伝説が残る富豪バスカヴィル家を舞台とするアーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ「バスカヴィル家の犬」(The hound of the Baskervilles)では、当主チャールズ・バスカヴィル卿の死体の傍に巨大な犬の足跡があったという設定で物語が進行していきます。

同様の手法は、身近なところで、秋月涼介氏のデビュー作『月長石の魔犬』や、テレビ化もされた『金田一少年の事件簿』「魔犬の森の殺人」など、数多くの推理サスペンスに登場します。

ヒーローズ

さらにまた、犬は、事件解決のヒーローとしても活躍しています。

たとえば、警察犬がそうですね。これは、人間の4000倍~6000倍といわれる犬の嗅覚能力を捜査に利用したもので、我が国では、警察が所有し使用する「直轄犬」、 警察が実施する試験に合格し警察から非常勤の警察犬として認められた「嘱託犬」があります。

他に、犯人制圧や災害救助犬のように被災者の捜索を行う「警備犬」も増えています。すでに立派な「職業」ですね。

日本警察犬協会では、シェパード(Shepherd)、ラブラドールリトリバー(Labrador Retriever) 、ゴールデンリトリバー(Golden Retriever) 、エアデールテリア(Airedale Terrier)、エアデールテリア(Airedale Terrier)、ドーベルマン(Dobermann)、コリー(Collie)、ボクサー(Boxer) の7種を警察犬として登録しています。

警察犬が初めて捜査に使用されたのは、19世紀末ドイツのヒルデスハイム市警察とされ、日本では1912年に警視庁がイギリス警察犬2頭を採用しています。

フレーズ

ところで、dogは、以上のような犬の多面的な習性と人間生活との密着度から、よくフレーズとして使われる単語の一つでもあります。

そもそもdogには、ストーカーとか、裏切り者、最低男とかいう意味が込められることがありますし、尾行するとか、悪さをするといった動詞でも使われます

土砂降りの場合に、cats and dogs というのは古典的フレーズとしてよく知られていますし、Don't wake a sleeping dog. というと、「寝た子を起こすな。」とか、「触らぬ神にたたりなし。」といったような諺になります。藪蛇だよと言う場合には、It's waking a sleeping dog. とすれば良いですね。

また、dog's breakfast というと滅茶苦茶とか外見上のだらしなさを指し、dog it となると、責任を逃れる、ことを意味します。

事件簿

さて、本シリーズ「ドッグス アンド ディーエヌエイ」では、鑑定によってもたらされる事件解決の世界、とくにDNA鑑定と事件との関係を見てみようという試みです。

いわば、土砂降りに消えてしまった証拠を暴き、眠りをむさぼる卑劣な奴らを突き止めるDNAストーリーです。

第1回目は、鑑定事件の導入として、我が国で初めて筆跡鑑定と血痕鑑定を採用した2つの事件、通称、「帝銀事件」と「下山事件」を取り扱います。


鑑定事件簿

  • 筆跡鑑定および血痕鑑定第一号事件
    • 帝銀事件
    • 下山事件
  • 死刑確定後再審無罪事件-「鑑定」は凶器にもなりうる
    • 財田川事件
    • 島田事件
    • 松山事件
    • 免田事件

DNA鑑定事件簿

  • ロシア帝国皇帝ニコライ二世
  • 「逃亡者」事件
  • 5300年前の石器時代人アイスマン
  • 猿人ピルトダウン人
  • チャップリン親子
  • 切り裂きジャック
  • フランス王妃マリー・アントワネットとルイ17世
  • O. J. シンプソン事件
  • フランス皇帝ナポレオン
  • 合衆国大統領ジェファーソン
  • ベートーヴェン

コラム DNA鑑定ノート

  • 「DNA鑑定」の問題点
  • DNA鑑定ビジネス





取材構成
本シリーズは事件研究班が担当します。
事件に関する問い合わせは、編集部までお寄せください。


鑑定

鑑定は、専門的な知識を持つ者が、科学的、統計学的、感覚的な分析に基づいて行う、評価・判断を指しますが、法的には、次の2つの訴訟手続きとして定められています。
まず、民事訴訟法上の鑑定は、裁判所の判断を補助するために行われる証拠調べの一つで、裁判所の指定した学識経験者又は団体が行う専門的知識の報告、または、その知識を具体的事実に当てはめて得た判断の報告を指します。裁判所は鑑定結果について拘束はされません。
次に、刑事訴訟法上の鑑定は、裁判所の判断を補助するために行われる証拠調べの一つ又は捜査機関が嘱託して行う捜査の一つで、裁判所又は捜査機関が委嘱した学識経験者(団体は不可)が行う特別の知識経験に属する法則又はその法則を具体的事実に適用して得た判断の報告を指しています。刑事訴訟法第12章で規程されています。
鑑定の手法には、血液鑑定、DNA鑑定、筆跡鑑定、精神鑑定などがあります。

法科学

法科学(Forensic Science)は、自然科学と社会科学の原理と技術を犯罪捜査に適用し、裁判所および裁判官が法廷において有罪か無罪かを裁定するために貢献する研究と学問とされます。
これは、法生物、法化学、法工学、法医学、その他特殊技術の研究など、各種の犯罪に対応する個々の分野、学際的領域から成り立っています。
ここで、法医学(Forensics Medicine)は、犯罪捜査や裁判などの法の適用過程で必要とされる医学的事項を研究又は応用する社会医学として一般に知られています。これはさらに応用法医学と基礎法医学に大きく分けられます。